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序曲(組曲)ホ長調GWV437(グラウプナー) [曲目解説]

クリストフ・グラウプナー Christoph Graupner (1683-1760)
序曲(組曲)ホ長調 GWV437
 Ouverture a 2 Violis. Viola. Oboe d'Amore e Cembalo
作曲:1737年頃
編成:2Violin、Viola、Oboe d'Amore、Cembalo

バロックアンサンブル上越2016 演奏者:
 オーボエダモーレ:藤原 満 ヴァイオリン:奈良秀樹、伊野江利子
 ヴィオラ:渡辺みほ チェロ:上野敦子  チェンバロ:笠原恒則

グラウプナー50歳台半ばに作曲された8曲からなる器楽曲集。
自筆譜には曲全体を示す題名はないが、当時の同様の形式の
器楽曲集を現在の慣例として「(管弦楽)組曲」と呼ぶ。
下段*参照。

構成(※は2016年上越公演では割愛、新潟公演では全曲演奏)
序曲:弦楽器、通奏低音
 Grave4/4拍子 - Allegro6/8拍子 - Grave4/4拍子の典型的なフランス風序曲
※マーチ:弦楽器、通奏低音
エア(自筆譜は無題):オーボエダモーレ、弦楽器、通奏低音
ガボット(1、2):オーボエダモーレ、弦楽器、通奏低音
サラバンド:オーボエダモーレ、弦楽器、通奏低音
エア(1,2):オーボエダモーレ、弦楽器、通奏低音
※ポロネーズ:弦楽器、通奏低音
メヌエット、トリオ1,2:オーボエダモーレ、弦楽器、通奏低音

グラウプナーはJ.S.バッハとほぼ同時期のドイツの作曲家。
ライプツィヒの聖トマス教会附属学校で音楽を学ぶ。同時期には
ファッシュハイニヒェンといったドイツ後期バロック音楽の重要な
音楽家も在籍していた。その後ハンブルグオペラのチェンバロ
奏者を経て(当時ヘンデルもヴァイオリン奏者で在籍)、ヘッセン=
ダルムシュタット方伯の宮廷楽長として生涯を過ごし、約2000曲の
作品が発見されている。うち1400曲程度!は声楽入りカンタータ。

グラウプナーの作品は宮廷外への持ち出しが禁止されていたため、
その後長く忘れられた存在となっていた。20世紀後半になり古楽の
復興とともに再評価されている。2005年にChristoph Großpietschと
Oswald Billによる作品目録がCarus Verlagより出版された。声楽曲を
中心に演奏機会が徐々に増えている。

楽譜:自筆スコア(ダルムシュタット大学図書館)
グラウプナー作品目録Thematisches Verzeichnis der musikalischen Werke
藤原による楽譜校訂覚え書き

*「序曲」「組曲」「管弦楽組曲」について
17世紀後半に付点(現代の書式では複付点)リズムの序奏(通常2拍子)
とそれに引き続く急速な部分(通常6拍子または3拍子)の形式の
バレエ、オペラの序曲をルイ14世の宮廷楽長リュリが確立した。
18世紀前半ドイツではこの形式の序曲にフランス風の"Ouverture"と
名付け、それに続いて舞曲を演奏する曲集が流行した。

作曲者による曲集全体の題名はなく、後世(主に20世紀)になり、
便宜的に「組曲」「管弦楽組曲」といった題名で広まるようになった。
J.S.バッハの「管弦楽組曲BWV1066-1069」もこのパターン。

当時、「組曲"Suite"」と作曲家が名付けるのは、アルマンド、
クーラント、サラバンド(+ジーグ)の組み合わせが原則で、
それにメヌエット、ガヴォット、ブーレ、ポロネーズなどの
舞曲を加えることもしばしばだった。この形式の曲ではバッハの
「フランス組曲」が最も有名。


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